健康情報
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2008年/2009年

風邪を漢方で治す
初期は麻黄剤、こじれたら柴胡、せきには麦門冬湯 症状に応じて使用

風邪を引きやすい季節になったが、風邪を治す漢方薬にはどんなものがあるのだろうか?北里研究所(東京都)東洋医学総合研究所の村主明彦医長は「よく知られている葛根湯以外にも、たくさんあります。病期、体調、症状に応じて用いるといいでしょう。」と話す。
 風邪の初期には、麻黄という生薬が含まれる麻黄剤がよく使われる。葛根湯は、麻黄や葛根など七種類の生薬が配合されており、発熱して、肩や首がこり、汗が出ないようなときに用いる。  さらに早い段階の風邪で、のどがいがらっぽい、悪寒がするといったときには、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)が適している。
 風邪がこじれて、下痢を伴ったり、下が白くなったりして、三日から一週間も治らないようなら、柴胡(さいこ)が含まれる柴胡剤使うのが適当だ。柴胡は、免疫力を高める働きがあるといわれている。よく使われるのは、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)で、柴胡、桂枝など九種類の生薬が含まれている。柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)は、普段から体力がなく、冷え性の人向きだ。
 一年中風邪を引いているような”万年風邪”の人には、補中益気湯(ほちゅうえつきとう)、十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)、人参栄養湯(にんじんえいようとう)などがいい。これらは、風邪は治ったけれどもすっきりしない場合のほか、予防的にも用いられる。
 風邪の漢方薬によく配合される麻黄には、エフェドリンという成分が含まれており、気管支を拡張したり、せきを鎮めたりする作用があって、切れ味がいい。その一方で、心臓や脳を刺激する働きもあるので、高血圧や虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)の人や不眠症の人、高齢者に用いるときには注意が必要だ。胃弱にも適さない。
 老人や虚弱な人、これまでの漢方が合わない人には、穏やかに効く香蘇散(こうそさん)や桂枝湯がお薦め。
 さらに症状別には、頭痛を伴う風邪に川きゅう茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)、激しく咳き込むようなら麦門冬湯、たんを伴うせきには清肺湯(せいはいとう)などがある。
 ただ、漢方薬には、好ましくない作用がでることもある。村主医長は「この症状にはこの漢方薬、といった勝手な思い込みは禁物。風邪を引いたら漢方を詳しい医師や薬剤師に相談するといいでしょう。」と助言している。(メディカルトリビューン=時事)
平成13年12月6日 静岡新聞


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平成12年国民栄養調査結果の概要 
カルシウムと鉄が不足

多くの人がカルシウム、鉄の摂取量が平均栄養所要量を下回っている―厚生労働省健康局生活習慣病対策室では、「平成12年国民栄養調査結果の概要」を11/8に発表した。

国民一人あたりの栄養素等摂取量をみると、カルシウムでは、男性の7〜59歳、女性の60〜69歳での摂取量が平均栄養所要量を下回る結果となった。
上回る結果となったのが、脂肪エネルギー比率(エネルギー摂取量に占める脂質からのエネルギーの割合)。20〜49歳で成人の適正比率の上限25%を上回った。
 また、たんぱく質、ビタミン類の摂取量は、調査対象者の平均所要量を充足。エネルギーの充足率は、男性で104%、女性で107%、全体では105%の結果となった。
食生活に関する調査において「意識してる栄養成分」では男性が、60歳代以外の全ての年齢階級において「特に意識しない」との回答が最も多く、40歳以上では「塩分」と「食物繊維」があげられていた。
 女性は、全ての年齢階級であげられていたのは「ビタミン」。年齢階級別では15〜29歳では「エネルギー」、30歳以上では、「食物繊維」「カルシウム等のミネラル」「塩分」が挙げられていた。
 「栄養や食事についての情報源」で最も多かったのは「テレビ・ラジオ」。男性では56.2%、女性では76.0%が「テレビ・ラジオ」を挙げた。以下、男性では「家族」(46.0%)、「新聞」(32.8%)女性では、「雑誌」(55.3%)、「友人・知人」(45.9%)となった。利用している情報源は女性のほうが豊富で、男性では「特になし」との回答が18.2%とじょせい(6.1%)より高かった。「利用したい情報源」については、実際の情報源として多く挙げられていたものと同じ結果となった。
 肥満、喫煙、飲酒、運動習慣の状況についての調査結果では、肥満者の割合が男性ではいずれの年代においても増加。一方若干女性では、やせの者の割合が増加していることが明らかとなった。
 同調査は、栄養改善法に基づき、国民の食品摂取量、栄養素等摂取量の実態を把握すると同時に栄養と健康の関連を明らかにし、広く健康増進対策等に必要な基礎資料を得ることを目的として行われている。  調査対象者数は男性5815人、女性6456人の計12271人。身長・体重等の身体状況調査のほかに栄養摂取状況、食生活状況を調査した。調査時期は平成12年11月。

平成13年12月6日 静岡新聞


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早食いは太る!サラリーマンの食調査で浮上
ほお張る量も減らして


「早食い、かまない、一口の量が太り過ぎの三大要因」−サラリーマンの食生活について民間研究機関が行った調査で、こんな経口が浮かび上がった。昔からいわれる「早食いは太る」の格言が実証された形。太り気味を気にしている人は、日ごろの食事スタイルを見詰め直してみては。
  調査は、ライオン歯科衛生研究所が東京歯科大などと共同で2000年4月、東京都内に勤務する20代から50代のサラリーマン男女340人を対象に実施。健康診断の結果を基に算出した肥満指標BMI(体重キロ÷身長メートル÷身長メートル)と、食習慣に関するアンケートの相関関係を分析した。BMIの数値が高いほど、肥満度は高まる。
 それによると、他人と比べ「食べるのが早い」と答えた人の平均BMIは23.5で、「遅い」と回答した人の同21.6に比べて1.9ポイントも高く、早食いの人の太り気味傾向がくっきり表れた。
 また、食事を「よくかんで食べる」という人(平均BMI21.8)より、「あまりかまない」人(同23.8)が、一口の量が「他人より少ない」という人(同20.8)より、「他人より多い」と答えた人(同23.5)がそれぞれ太っていた。
 「早食い」と「遅食い」で一口の量を比べたところ、「早食い」では「他人より多い」という人が54.8%だったのに対し、「少ない」人はわずか2%。逆に「遅食い」では「他人より多い」人3.9%に対し、「少ない」という人が31.4%もいて、ほお張る量の多さと、早食いの関係も浮き彫りになった。
 結果について同研究所の武井典子主任歯科衛生士は、「早食いの人は、脳の満腹信号が出る前に食べ過ぎてしまうと言われるが、肥満傾向との関連性がこれほど明確に表れたのは驚き。一口の量を減らし、ゆっくりかむことの大切さ一層強く呼び掛けたい」と話している。
平成13年11月14日 静岡新聞

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がん予防 実験で証明 カテキンに熱い視線
会場から質問次々

静岡市池田のグランシップをメーン会場に開かれている世界お茶まつりの国際O−CHA学術会議は3日目の7日、「がん予防」をテーマにした発表が相次いだ。米ゲースウエスタンリザーブ大のサンジェイ・グプタ研究員は緑茶カテキンの前立腺(せん)がん予防効果をマウスで確認した。米国立がん研究所のジェームズ・クラウエルがん予防剤開発部長はカテキンの臨床への移行を報告。お茶の主要成分であるカテキンの有効性が静岡から世界に発信された。

  グプタ研究員は、O−CHAパイオニア学術研究奨励賞受賞の報告として発表した。がんを発症しやすくしたマウス群での実験で、一日ヒトで緑茶6杯分緑茶カテキンを経口で与えた群と与えない群で比較。50日前後でがんを発症して死んだ。しかし、カテキンを投与した群は80日経過で20%のマウスが生き残ったと報告した。また、カテキン投与群はがんの転移がほとんど見られなかったという。グプタ研究員はこのメカニズムとして「緑茶カテキンが前立腺がん細胞にアポトーシス(細胞の自殺)を誘導する効果があると考えられる」とした。
 発表に対して会嬢からカテキン濃度やがん転移率の詳細なデータを求める声が相次ぎ、関心の高さをうかがわせた。
 クラウエル部長は茶のカテキン成分のがん予防効果について動物の実験段階からヒトの臨床に移っている事を強調した。カテキン複合物が容易にヒトの肝臓や前立腺に吸収され、副作用もない事を示した。そして現在、皮膚がん予防効果を見るためカテキンをクリーム状にした臨床実験が進行中と報告した。
平成13年10月8日 静岡新聞

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特定部位除去すれば『牛肉の安全は確保』
岩手大で狂牛病シンポ

国内初の狂牛病発生を受けた日本獣医学会主催の緊急シンポジウム「牛海綿状脳症(狂牛病)はなぜ日本でも発生したか」が7日夜、盛岡市の岩手大で開かれた。
 獣医師の他都道府県関係者や一般市民ら約700人で会場はいっぱいになった。この中で山内一也・東京大名誉教授は「30ヶ月以上の牛すべてにプリオン検査を行い、12ヶ月以上の牛で(異常プリオンが集まりやすい)特定危険部位を除去すれば、牛肉の安全は確保できる」と述べ、厚生労働省の対策を評価した。
平成13年10月8日 静岡新聞

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狂牛病 初の食品回収要請
厚労省 不安解消目指す

狂牛病問題で厚生労働省は五日、牛を原材料とする食品に脳や脊髄などの危険部分が使われていないかを製造、加工業者に点検させ、危険部分の使用が判明した場合は崖当製品の製品中止や自主回収を求める通知を出した。各業界団体を通じ指導する。
 狂牛病問題で行政が危険部分を使った食品の回収に踏みこむのは初めて。当初の方針では回収の判断は業者側にゆだねるとしていたが、さらに強化し自主回収の実施を要請した。
 同省は既に、食肉処理の段階で危険部分の焼却を義務付ける通知を出している。今回の通知はこれとは別に、食品の製造段階でも危険部分を使用しないよう徹底する事で、消費者の不安解消につなげるのが狙い。
 点検対象は、製造や加工に際し、牛を原材料に使った食品すべて。骨や肉などから抽出した「牛エキス」を使ったスープやカップめんなどの加工食品や「骨粉」を使った健康食品、「胎盤エキス」などを使った美容食品などが含まれる。
 通知は脳、脊髄、目、小腸先端部の危険四部分を使用したり、背骨を使う場合には脊髄が混入していないかなどを点検し、使用や混入が判明した場合は速やかに販売を中止することとしている。
 使用や混入の有無が確認できない場合も同様の措置を取るよう求めた。
平成13年10月5日 静岡新聞

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危険4部分の廃棄義務化  厚生省狂牛病で緊急対策

狂牛病(牛海綿状脳症)の牛一頭が国内で初めて見つかった問題で、厚生労働省は26日、牛の脳や脊髄(せきずい)など、食べると人に感染する危険があるとされる4部分が市場に流出しないよう、食肉処理場での廃棄を義務付けることを決めた。

 当初、2頭目の感染牛が見つかった段階で義務付けを具体化する方針だったが、英国の研究所で感染が確認され、消費者に不安が広がっていることから、前倒しの対策強化に踏み切ることになった。

 健康な牛を含め食肉処理される年間約130頭すべてが対象。27日に開く都道府県の担当者を集めた緊急会議で焼却廃棄を徹底するよう通知する。

 4部分は脳、脊髄、眼と小腸の先端部分で、健康牛の場合は一部が食用になっているが、これまで国内では廃棄などの規制はなかった。国際獣疫事務局(OIE)が「狂牛病発生頭数の少ない国から輸入する場合」の危険部分として除去を指定している。
 厚生省は10月から食肉処理される生後30ヵ月以上脳死を対象に狂牛病の精密検査をする予定。その際に感染牛が見つかる可能性や、人への感染も完全には否定できないことから、「予防的措置」(同省幹部)が必要と判断した。

平成13年9月27日 静岡新聞

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旅で心身リラックス
免疫力が向上、いやし効果も

夏の旅行シーズンがやってきた。旅は心身をリラックスさせる一方で、慣れない環境が疲労や体調不良を招くことも。このほど東京で「旅と健康シンポジウム」が開催され、旅の効果を科学的に研究し、病気の予防も目指す旅行医学が注目された

注目集まる旅行医学

 「旅行は心身を休ませ、免疫力を高める効果がある」。田中佑子・東京理科大大諏訪短大教授(心理学)らが、東京から九州の湯布院や阿蘇、雲仙、長崎などを回る2泊3日ツアーの参加者を分析したところ、こんな結果が出た。男女17人の血液、尿、だ液、脳波などを旅行前、旅行中、帰宅後にそれぞれ採取、測定。心理状態を調べる質問用紙も旅行前、中、後に記入してもらった。

 脳波では脳の活動を示す脳電位が旅行中に低くなる一方で、リラックスした状態の時にでるアルファ波に比率が増加していた。生理的には免疫力を強め、がん細胞の増殖を抑えるとされる「NK細胞」の活性が旅行中に高まり、細胞を傷つける活性酸素を抑える機能も上昇していた。

 ストレスを感じて分泌されるアドレナリンなどの体内物質が全体的に減少。心理状態でも「悩み」「怒り」「いらいら」などが旅行中から帰宅後まで減り、幸福感が増加した。田中教授は「旅行は心身を活性化させるよりも、いやす効果がある。あまり旅行しない人ほど効果は大きかった」と分析する。

 ツアーは、日本旅行業協会の「旅と健康」調査プロジェクトの第一回で参加者を一般募集し三月に実施。旅行者の本格的な生理学的調査は国内初という。調査結果について森昭三・筑波大名誉教授(健康教育学)は「今回は旅のプラス面が確認された。今後、海外や長期の旅行ではどうか、添乗員の有無による変化などを調べる必要がある」と指摘した。

 旅行医学が欧米で1970年代から盛んに研究されている。国内では関心が薄かったが、エコノミークラス症候群の報道などで注目されるようになった。長時間、同じ姿勢でいると静脈の血流が滞り、血栓が出来て肺の血管に詰まるのが同症候群だ。防ぐには、足の運動や、適度な水分の摂取が重要だ。

 国際旅行医学会員の篠塚規医師は「つい最近まで、長時間のフライト前は水分を控えるよう勧める旅行業者もいた。高齢者の旅行者が増える中で、正確な旅行医学の情報が求められている」と話す。

 日本人の同症候群の報告例では、中高年の女性が多く、窓側や真ん中の座席が通路側席より多いことが知られている。引っ込み思案の中高年女性が水を控え、座席を立つのを遠慮していれば危険要因が増える。日本旅行業協会は今後、研究者や旅行会社などと連携し、日本人旅行者が旅先でどんな健康障害を起こしているかの実態を調べ、データベースを作って公開していく計画だ。

平成13年7月16日 静岡新聞

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ガン予防につながる免疫力
11年間の調査で実証 カギ握るNK活性

各人の体の免疫力は日々発生するガン細胞をやっつけ、ガンという病気になる前に排除しているのではないか。この「がん免疫監視仮説」を、中地敬・放射線影響研究所学部長(前埼玉県立がんセンター専門調査員)や今井一枝研究員らが11年に及ぶ住民の調査で実証した。論文は昨年末に英医学誌ランセットに発表され、免疫力ががん予防につながる意義を初めて明示した報告として注目されている。

採血して測定

 研究グループは1986〜90年に埼玉県内で40歳以上の住民約600人の生活習慣や免疫力を調べた。免疫力は、がん細胞を殺すのに重要な役割を果たすリンパ球のナチュラルキラー(NK)活性で見た。NK活性は一日の変動が大きく、採血後なるべく早く計る必要がある。このため、7.8.9月の午後1〜3時に本人の同意を得て採血し、5時間以内に測定を始めた。
 NK活性は個人差が大きかった。適度に体を動かして喫煙せず、規則的な食事などの生活習慣を持つ人々ほど平均活性が高かった。その後、住民の健康状態を追跡調査。測定後2年以内にがんになった人を除いて、97年までに154人のがん患者を確認した。NK活性が「高い」「中程度」「低い」に三等分してがん発生率を比べた。

2倍近い危険

 NK活性が低い人々ではがん発生率が観察期間中はずっと、男女とも明らかに他の人々を上回った。がんになる相対危険度は、活性が低い人では、中程度か、高い人の二倍近くあった。この傾向は年齢や生活習慣の影響を考慮して解析しても同様に見られ、各人の免疫力が発がんに直接関連している事を裏付けた。
 研究グループは住民一人一人にNK活性など測定データと生活習慣の問題点を知らせ、地元の町と協力して健康増進を支援した。中地さんは「NK活性が低いのは発がんの危険を高める。中程度まであげるだけで、がん予防に役立つ」と提言する。調査対象の住民の平均年齢は現在65歳。高齢者の健康問題を採るため、調査を継続する。

生活習慣で改善

 ではどうすればよいか。研究グループは、高いNK活性と関連する生活習慣を調べ、緑色野菜や乳、大豆製品を食べるなど八項目にまとめた。酒のみはNK活性が高めと分かり、適度な飲酒も良い習慣に入れた。こうした生活習慣に努めれば、NK活性を上げて、様々な病気を予防できる可能性はあるという。
 実際、埼玉県立がんセンターで乳がん手術を受けた患者に、主治医と協力して生活指導したところ、生活習慣が改善した患者ほど、Nk活性が上昇した。男性会社員約300人を調べた別の研究では、ささいなことで動揺して落ち込みやすい人ほど、NK活性が低いことも分かった。研究グループの今井さんは「性格など心理的因子も、ストレスや生活習慣を介して健康に影響する。個人の性格も考慮した予防が重要だ」と話している。

高いNK活性と関連した生活習慣  
 @ 喫煙しない
 A 適度の飲酒
 B 規則的な生活(食事、睡眠)
 C 適度な身体活動
 D 適切な体重の維持
 E 緑色野菜(青物)を毎日食べる
 F 乳・乳製品、大豆製品を食べる
 G ストレスの解消を図る

 平成13年6月18日 静岡新聞

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働き盛り 男の健康が危ない
肥満や高脂血症の割合増加

30から40代男性肥満が進み、動脈硬化を引き起こす高脂血症(高コレステロール血症)の人の割合も増加―。

 厚生労働省が6日公表した「第五次循環器疾患基礎調査結果概要」で、働き盛りの男性の健康が危険にさらされている事実が明らかになった。これに対し、同世代の女性は20年前、10年前と比べ、やせる傾向がみられた。

 同省生活習慣病対策室の担当者は「30代、40代の男性の健康状態は際立って悪い。同世代の女性にやせる傾向が見られるのはダイエットブームなどの影響ではないか。やせ過ぎが問題になる女性も増えている」と指摘している。

 肥満や高脂血症は、日本人の死因の上位である脳梗塞につながる危険因子で、食生活などの生活習慣の改善による予防が重要とされる。厚生労働省は10年ごと調査を実施、今回は昨年11月に全国の30歳以上の男女8369人を対象にデータを集計した。

 肥満と診断された人の割合は男性28.2%、女性23.6%。肥満の判定に使う指標のひとつで、体重を身長の二乗で割った「BMI」の平均値をみると、男性は30代と40代を含むすべての年代で20年前、10年前より肥満の傾向が進んだ。 同世代の女性はやせる傾向で、30代だけで比較すると肥満男性の割合は女性の2倍に達していた。

平成13年6月7日 静岡新聞

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蚊媒介の脳炎ウイルス 拡散解明へ鳥類がカギ
米国で日本人研究者が調査

日本脳炎のように蚊から人に感染、脳炎などを引き起こす「ウエストナイルウイルス」の実態解明に、日本人研究者が米国で取り組んでいる。地中海周辺で広く見られるウイルスだが、1999年に西半球では初めて、ニューヨークを中心に猛威を振るい、61人が発症、7人の死者が出たことから注目された。ウイルスはどうやって広がるのか。研究のカギを握るのが、カラスなどの鳥類だ。

 この研究者は、米国の州立ロードアイランド大の竹田努・アルボウイルス研究主任(34)。北海道大で地球環境科学の博士号を取得後、98年に渡米した。ウエストナイルウイルスは37年、アフリカ・ウガンダで女性の血液から分離された。イエカ属の蚊で感染し、人では筋力の低下を伴う脳炎や無菌性髄膜炎などを引き起こし、死亡率は一割前後とされる。 アフリカや欧州、アジアの中西部で時々流行し、近年では96.97年にルーマニアで500人以上が発症した例があるが、北・南米や日本での確認例はなかった。

 99年のニューヨークの大規模感染の原因をめぐっては、流行地域からの航空機に媒介蚊が紛れ込んだとの見方があるほか、@慢性感染した野鳥の輸入 A渡り鳥 など、鳥の関与を指摘する声が少なくない。ニューヨークでは99年夏、鳥類の死体からウイルスが次々と検出された。だが当初、政府の対応は鈍かったという。

 「政府は蚊のウイルスは越冬せず、流行はこの年で終わるとみていた。翌年2月、真冬のニューヨークの地下で集めた蚊からウイルスが検出されたとの報告が出て、ようやく重い腰をあげた」と、竹田さん。ロードアイランド州の要請で、蚊が媒介する別の脳炎ウイルスを調べていた竹田さんは、昨年5月から、死んだ鳥のウイルス調査を新たに開始。8月には同州で初めてカラスの死体からウエストナイルウイルスを分離した。これにより、同州でも対策が本格的に動き出した。

 流行2シーズン目の昨年はニューヨークに隣接するニュージャージー州で18人が発症し、うち2人が死亡した。ではウイルスはどのような過程を経て人に感染したのか。ウイルスは鳥と蚊が感染し合いながら移動、ウイルス汚染の範囲を広げ、蚊から人にも感染する…こうした見方も成り立つ。

 しかし、竹田さんは「ロードアイランド州で確認された約80羽を含め、昨年全米でウイルスが検出された4000羽以上の鳥は、全て発症しているか死体だった。鳥は人と同様、被害者の可能性もある」と慎重だ。「蚊も鳥も、生態系について知られていないことが多すぎる。この2つがどう絡んでいるのか少しでも見極めたい」と竹田さんは今年の調査を近く再開する。

 平成13年5月12日 静岡新聞 『科学』より抜粋

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高齢者の肺炎は脳の病気
神経伝達物質が減るため

高齢者は肺炎でなくなるケースが多い。その肺炎を脳の病気が原因と見る新しい戦略で大幅に予防できる事を、東北大医学部の佐々木英忠教授(老年医学)らが臨床試験で示した。成果を米国老年医学会雑誌の最新号に発表した。 佐々木教授らは「高齢者に肺炎が多いのは脳の障害で神経伝達物質が減り、せきやのみ込みなど口腔(こうくう)反射が低下し、肺に細菌が入りやすくなるため」と分析。肺炎を肺だけでなく、脳の病気とする新しい視点を提案している。

 せきなどの反射を高める神経伝達物質のサブスタンスPに注目した。65歳以上の高齢者127人に、このサブスタンスPを増やす降圧剤のACE阻害財を与えつづけたところ、2年で肺炎の発生率は3分の1に減った。 また、脳の神経伝達物質のドーパミンを上げる作用があってパーキンソン病やインフルエンザの治療に使われるアマンタジンを80人に投与し、3年間で肺炎の発生を5分の1に抑えた。トウガラシの辛味成分、カプサイシンも口腔反射を改善し、肺炎や誤嚥(ごえん)性気管支炎を予防する事を見つけた。

 口の中の雑菌を減らす口腔ケアを毎日実施すると、肺炎が40%減った。この他、食後に体を起こし座位にして胃液が逆流しないようにしたほうが脳の反射をよく保ち、肺炎の予防に役立つという。 佐々木教授は「お年寄りの肺炎の死亡率は100年前と変わっていない。予防の戦略を根本から練り直さないといけない。脳血管障害を防げば、肺炎は半減する。また、口腔ケアなどの介護は、現代の抗生物質よりも有効だ」と話している。

 平成13年4月28日 静岡新聞「医療ネット21」より抜粋

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笑いの効用
脳神経外科医が落語で実証

笑いは、体の免疫力を高めるといわれるが、脳にもよい影響を与えるようだ。中央群馬脳神経外科病院の中島英雄院長は笑うことによって、脳は、血流の流れが活発になって、元気になることをつきとめた。

笑わないと血流低下 同病院では、月に1回「病院寄席」を開いており、中島院長も”落語家”として高座に上がっている。こうした環境の中で、笑いが脳にどんな変化を起こすのかを、患者の協力を得て調査した。患者は、35歳から78歳までの22人(男性14人、女性8人)で、脳梗塞などの脳血管障害で入院していた。この調査は、脳の血液の流れ(脳血流量)などをカラー画像で見られるSPECT(スペクト=シングルフォトン・エミッション・コンピューティッド・トモグラフィー)という装置を使って、脳の数カ所を計り、寄席の前後で比較する方法で行った。

その結果、血流量は14人で増加し、5人で低下、3人は測った場所によってばらつきがあった。「血流が増加した人は落語が面白かったと感じた、つまり笑った人たちで、低下した人は疲れたとか、面白くなかったと感じた、笑わなかった人たちでした」と中島院長。

くつろぐ脳波も増加 脳血管障害などが起きると、患部付近の脳細胞は死んでしまい、再生しないため、脳梗塞患者には半身まひや言語障害が起きる。細胞は酸素や栄養がなければ生きていけない。細胞に酸素を運ぶのは血液であり、血流量が増加すれば、脳細胞も生き生きと元気に働くことになる。

「患者は一般に、なぜこんな病気になったのか、これからどうしようかと、暗く沈んでいます。そんな状態では、脳の元気もなくなり、体にも影響します。落語にしろ映画にしろ、何でも面白いと感じるものに接して、大いに笑ってください」中島院長は、脳波も調べたが、落語を聞いて笑った人は、くつろいでリラックスしている時に出現する脳波と、考えようとして脳が働く時に出現する脳波が、共に増えていた。この結果からも、笑いで脳が元気になることが分かった。

「今後はビデオテープなどを利用して、笑いを脳梗塞後のリハビリに取り入れるなど、笑いの効用を活用していきたい」と中島院長は話している。

平成13年3月8日 静岡新聞(メディカルトリビューン=時事)

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狂牛病流行期の英国から牛の臓器、日本に
88〜90年、飼料用に

【ロンドン5日時事】人間に伝染する恐れがあると指摘されている狂牛病(ウシ海綿状脳症)の主感染源とみられる牛の「臓器」や「肉骨粉」が、狂牛病流行期の英国から日本に輸出されていた事が5日、明らかになった。英税関当局によると、「臓器」は1988年から90年にかけては年300トン前後輸出されていた。英国では、80年代後半から90年前半にかけ、狂牛病が爆発的に流行。感染牛の脳や脊髄を含む「臓器」などを飼料添加物として用いた事が、伝染原因とみられている。

狂牛病は、特殊なたんぱく質「プリオン」により、脳が海綿状になる病気で英政府は91年7月、脳、脊髄やリンパ節など「プリオン」が集積しやすい特定の臓器の加工品を輸出禁止とした。「プリオン」に感染すると、牛の場合5年程度で発症。人間の場合は、10〜20年の潜伏期感を経て、致死性の痴呆症「新型クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)」を発症する公算が大きいとされる。

日本に流入した「臓器」や「肉骨粉」の主用途は、牛、鶏、豚の飼料ペットフードと見られるが、英国では「臓器」が一部食品用に使われたこともあったもよう。また、日本の家畜用に輸出した製品は、伝染性家畜病を予防するため、英国内の製造過程で特別な加熱処理を施されていた可能性がある。しかし、英国本土からの輸入製品に同様の処理を求めていた北アイルランドでも狂牛病が発生している。

 平成13年2月7日 静岡新聞

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緑茶加工の紅茶品種 アレルギー抑制効果
農水省のグループ 開発、商品化に意欲 二茶以降が多く含む

 生物系特定産業技術研究推進機構(生研機構)の茶研究発表会が16日、静岡市内で開かれた。紅茶品種の「べにふうき」や「べにほまれ」にアレルギーを抑制する成分があることを発見したグループは、べにふうきなどを緑茶として加工すると効果が表れることを証明し、「抗アレルギー緑茶」の開発、商品化にあらためて意欲を示した。

 べにふうきなどで見つかった抗アレルギー成分は、緑茶に含まれる「カテキン」の一種。カテキンはガン予防などさまざまな効能が知られているが、この成分は一部が構造変化していて、一般に飲まれている緑茶に含まれていないという。農水省野菜・茶業試験場の山本万里主任研究官らのグループは、実験が難しかった”アレルギー反応細胞”を、”ガン細胞”と融合することで培養に成功し、ハウスダストなど、アレルギーを抑制するこの成分を突き止めた。

 もともと、べにふうきは茶葉を発酵させる紅茶用で、山本研究官によると、茶葉を発酵させない緑茶や包種茶(30%程度まで発酵させたお茶)でないと成分が残らないという。また、この成分は二番茶以降に多く含まれていることも新たに分かった。

 山本研究官は、緑茶としてのべにふうきなどの活用を提案し、「実験結果からみると、緑茶に他にも抗アレルギー成分がある可能性が高い」と指摘。「機能性を持った『抗アレルギー茶』の開発を目指して、さらに解明を続けたい」と話した。

 生研機構は新産業の掘り起こしを目的とした国の基礎研究プロジェクトで、同試験場や静岡大、県立大などの研究者が参加している。発表会ではこのほか、茶の肝機能保護作用などについて発表が行われた。

平成13年1月17日 静岡新聞

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ビールに白内障予防効果

ビールは白内障と動脈硬化の予防に有効だとする研究結果をカナダや米国の研究チームがハワイで12月に開かれた環太平洋化学会議で発表された。

 カナダ・ウエスタンオンタリオ大の研究チームの発表によると、白内障は過剰な糖の存在で水晶体の細胞内にあるミトコンドリアが傷つくために起きる。ビール中の酸化を防ぐ物質にはミトコンドリアを保護する働きがあるという。

 また米スクラントン大の学者は、ハムスターにビールを毎日飲ませる実験をした結果、動脈硬化の発生率が半減したと発表した。やはりビール中の酸化防止物質の効果だという。

 この物質には特に黒ビールなどの色の濃いビールに多く含まれる。紅茶やグレープジュースが含む酸化防止物質も同様に有効らしい。

平成13年1月14日 静岡新聞

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環境ホルモンの影響 横浜で国際シンポ肯定・否定派が平行線
米の教授らマウス研究を通して一石

 内分泌かく乱物質(環境ホルモン)として疑われる物質が、環境中に存在するような極めて低い濃度で本当に生物の発生や発達に影響を与えるのか―。昨年12月に横浜市で開かれた環境ホルモンに関する国際シンポジウムでは、この問題が大きな焦点となり、肯定派・否定派がそれぞれの実験データを基に主張を展開した。しかし、議論は平行線のままで環境ホルモンの影響を確定するにはさらに、研究を積み重ねる必要がありそうだ。

 環境ホルモンが、通常の生殖、毒性試験で対象となる濃度を下回る極めて低い濃度で影響を与えるかどうかは「低用量問題」と呼ばれる。今回のシンポではプラスチック食器などに使われるポリカーボネイトの原料となるビスフェノールA(BPA)の低用量作用が議論の中心となった。

低濃度で生殖に影響 BPAは女性ホルモンのエストロゲンと同様の働きがあるとされ、環境省も環境ホルモンの疑いがある65物質のうちのひとつに指定している。米ミズーリ大コロンビア校のフレデリック・ボムサ―ル教授らが1999年10月、BPAは環境中で検出される程度の低濃度でも胎児期のマウスに作用すると生殖機能の発達に影響すると発表したことが議論の発端。ほかの研究者らが再現してみても影響を確認できない事があり、環境ホルモンをめぐる議論の焦点となっている。

受精卵の成長促進 シンポで、米リサーチトライアングル研究所のロシェル・タイル博士は、えさを混ぜたBPAをラットに与え、親からひ孫まで三世代にわたる影響を調べた大規模な実験結果を報告。低濃度のBPAは生殖機能や成長に影響を与えず、低用量作用はなかったと報告してた。

 一方、東大医学部の堤治教授は、受精卵をマウスから採取しBPAを加えて培養し、成長の過程を調べた。八細胞期から胚盤(はいばん)胞になる段階で比較したところ、高用量では胚盤胞への発育が抑制されたが、低用量では逆に促進されたと発表。「二世代、三世代試験ではわからない、微妙な内分泌環境の変化を見ていく必要がある」と指摘した。

行政の対策遅れ懸念 ボムサ―ル教授は「多くの研究結果から見て、既に議論の余地はなく今後どう対策を進めていくかという新しい段階に入ったと思う」と述べ、BPAに低用量作用があることは間違いないと強調。手法の違いで結果がばらついているが、試験法が確立されれば、将来、このような議論はなくなると主張した。

 96年に「奪われし未来」を出版し、環境ホルモンの危険性を警告した世界自然保護基金(WWF)のティオ・コルボーン博士は、ホルモン作用が確定しない事で、行政による対策が遅れることを懸念。「環境ホルモンは多くの人に影響を与え、ほんのちょっとの差でも、大変な結果となる」と指摘し、「各国政府は早急に対策を取らなければならない」と訴えた。

平成13年1月13日 静岡新聞

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フタル酸ジエチルヘキシル第3世代に悪影響
信州大など研究 出生率・生存率が低下

 信州大医学部(長野県松本市)衛生学講座と加齢適応研究センターの共同グループは一日、生殖機能などに悪影響を及ぼす内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の疑いがあるとされるフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)をマウスに投与すると、孫に当たる三世代の出生率と生存率が著しく低下するとの研究結果を明らかにした。

 DEHPは塩化ビニールなどのプラスチックを加工しやすくする加塑剤。塩化ビニール製の手袋から食品に移る可能性があり、環境庁は人体への影響を優先的に調べる物質のひとつに挙げている。

 実験は、体内に摂取された環境ホルモンが悪作用を起こさないよう一部遺伝子操作したマウスと遺伝子操作しなかったマウスにそれぞれ微量のDEHPを投与、同じ群で交配させて繁殖状態を比較した。

 第二世代では両群に差は出なかった。しかし第三世代では遺伝子操作したマウスが第二世代とほぼ同じ出生率だったのに対し、遺伝子操作しなかったマウスは約7割に落ち込み、出生した個体のうち約5割が2日以内に死亡した。

 同グループの那須民江講師(52)は、「追加実験などを行い確証を高めていくが、第三世代への影響が明らかになったのは初めてと思う」と話している。

平成13年1月3日 静岡新聞

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